分娩検知システム:牛わか

画像認識AI技術を用いて牛の分娩兆候を検出し飼養者へ通知するシステム(製品名:牛わか)

北里大学獣医学部 動物飼育管理学研究室(青森県十和田市)、ノーリツプレシジョン株式会社(和歌山県和歌山市)、ライブストックジャパン株式会社において、画像認識AIで牛の分娩兆候を非接触で検出して飼養者へ通知するシステムを新たに開発・製品化しました。

この開発により、養牛農家では、これまで昼夜を問わず行われていた分娩監視にかかる労働負担が軽減するとともに、分娩兆候通知メールによって適切な介助が実現することにより、分娩事故の低減が期待されます。

開発の背景(肉用牛をめぐる課題)

養牛農家において分娩時の死廃事故は、経済的損失や精神的ダメージをもたらす重要な課題です。近年、黒毛和種の妊娠期間は延長傾向にあるとの報告もあり、飼養者は分娩事故を防ぐために、昼夜を問わない長期間の分娩監視を強いられており、過重な労働負担が大きな問題となっています。そのため、分娩時期を特定し、分娩事故を低減するための技術が求められていました。

既存の分娩監視技術

既存の対策技術としては、監視カメラによる分娩監視の効率化や分娩前の体温変化に着目した分娩監視の取り組みが進められています。監視カメラについては、分娩監視の効率化には寄与しているものの、常時監視からは解放されません。種々のセンサーを牛体内・外に装着し、得られた情報から分娩兆候を捉え、飼養者に通知する技術が普及していますが、衛生上の問題や装着にかかる労力、牛に対する負担など課題が残されていました。

分娩前に特徴的な行動変化

カメラで撮影した牛の行動を解析することで、分娩前に特徴的な行動変化(分娩兆候)を検出できることを確認 

これまでの研究により、
カメラで撮影した牛の行動を解析することで、非侵襲的に分娩兆候を検出できることを明らかにした

Nabenishi et al., Predicting the start of calving in Japanese Black cattle using camera image analysis. Journal of Reproduction and Development, 67: 53–58, 2021.

破水前12時間における行動(動線)の変化

破水が近づくにつれ行動量が増加し、特徴的な動きが観察

本開発の概要

分娩前の行動変化を検知して分娩時期を予測する監視カメラを開発

・可視動画、遠赤外線動画の撮影と閲覧が可能
・AIが分娩予定牛の行動を解析
・分娩が近くなると、飼養者に自動でメール通知

分娩予測通知システム

今回開発した『分娩検知システム(牛わか)』は、分娩予定牛を最新のサーマルカメラで監視し、画像認識AI技術によって分娩前に特徴的な行動(分娩兆候)を検出したときに農家に自動通知することで、適切な分娩介助を支援します。これは、本学獣医学部におけるICT(情報通信技術)を活用した家畜生産技術の基礎研究をもとに、生産現場のニーズに応え、民間企業と協業して開発したシステムです。

本製品の導入により、分娩監視にかかる労働負担の軽減や、分娩事故の低減が期待されます。

分娩検知カメラ

この『分娩検知システム(牛わか)』は、2021年7月1日に、ノーリツプレシジョン株式会社から発売される予定です。

詳細は、以下のリンクをご覧ください。


http://ushi-waka.noritsu-precision.com/