商品説明 飼料設計アドバイスシステム “フィードバランサーカウ” & “フィードバランサーカーフ”
肉用牛繁殖農家や技術者向けのスマートフォンアプリとして、繁殖雌牛に対する適切な飼料給与量やバランスを助言できる『飼料設計アドバイスシステム(フィードバランサー)』を新たに開発したのでお知らせします。
この開発により、肉用牛繁殖農家では、繁殖雌牛に必要な飼料給与量や栄養素のバランスを把握できるとともに、必要な栄養素を過不足なく給与できるようになり、繁殖成績の改善が見込まれ、生産性の向上が期待されます。
1.飼料設計アドバイスシステム開発の経緯
繁殖成績の低下は、繁殖農家において収益性に大きな影響を及ぼす重要な問題です。特に、繁殖経営では、“1年1産”が経営目標とされているところですが、家畜改良増殖をめぐる情勢(農林水産省:R2)によると、国内における平均分娩間隔は13.2ヶ月であり、昨年新たに策定された家畜改良増殖目標においても、“分娩間隔の短縮が課題”と示されています。
分娩間隔の延長には、発情見逃しや人工授精技術をはじめ様々な要因が関与していると考えられます。発情見逃しを減らすための対策としては、畜産現場へのICT導入のゴールドスタンダードである、活動量センサーを活用した発情発見装置が広く普及するようになってきました。導入効果を実感している農家も多いことでしょう。発情発見効率を高めることは、分娩間隔を短縮するうえで重要な課題の一つであることは間違いありません。とは言うものの、そもそも、良い発情がくるような飼養管理(=栄養管理)を行うことこそがもっとも本質的な課題であり、その土台のうえに繁殖管理が成り立つことを再認識しなければなりません。言い換えると、いくら高性能のAI搭載活動量センサーシステムを導入したとしても、発情がくるような管理をしていなければ意味がないということになりますし、発情を発見して授精したとしても、卵巣-卵子や子宮のコンディションが悪いために受胎しない、ということにもなりかねません。
2.繁殖雌牛の飼料給与量について
「この牛には何をどれだけ与えればいいの?」という問いに対する情報が、肉用牛繁殖雌牛の飼育現場では非常に少ないのではないかと感じてます。酪農現場では古くから飼料設計という概念が定着し、現在はアミノ酸、脂肪酸レベルまでコントロールするモデルが普及しています。1日に50kg以上のミルクを生産する高泌乳牛であるからこその話でもありますが、肉用牛繁殖雌牛においても維持、妊娠、授乳に必要な養分量、すなわち、“何をどれくらい”という技術情報を普及する必要があると考えていました。
農家の皆さんにはあまり馴染みがないかもしれませんが、飼料給与量の目安として、我が国には日本飼養標準というスタンダードがあります。家畜の成長過程・生産量に応じた適正な養分要求量を示したものであり、家畜飼養管理の基本(目安)となるものです。飼養地域や環境、牛舎構造が異なるのですべての農家の牛に当てはまるものではありませんが、ひとつの“ものさし”として活用することができます。日本飼養標準(肉用牛)には、繁殖雌牛の維持、妊娠、授乳に必要な養分量が細かく記載されています。例えば、体重500kgの雌牛に必要な1日当たりの養分量は、乾物(DM)6.5kg、粗タンパク質(CP)515g、可消化養分総量(TDN)3.3kg、カルシウム(Ca)15g、リン(P)16g、となります。飼料成分の詳細な説明は別の機会にするとして、要するに体重500kgの雌牛を維持するためには上記の養分量を満たす飼料を給与すればよいということになります。養分給与量が不足すれば牛は痩せていくでしょうし、過剰な場合牛は太るでしょう。栄養状態の過不足が続けば繁殖成績に影響を及ぼすことになります。
ただ、農家レベルで飼料成分の計算をするのは現実的ではありません。現在、パソコン用の飼料設計ソフトウェアや表計算ソフトウェアを活用した飼料設計システムが使われていますが、生産現場で日常的に活用するには機動性に課題が残ります。
そこで私たちは、スマートフォンを飼養管理技術のツール(農具)のひとつとして捉え、スマートフォンアプリとして使用可能な繁殖雌牛用の飼料設計アドバイスシステム(フィードバランサー)を新たに開発しました。
飼料設計アドバイスシステム
3.飼料設計アドバイスシステム(フィードバランサー)について
開発した飼料設計アドバイスシステム(繁殖雌牛版:フィードバランサーカウ)では、まず、設計したい雌牛の情報として体重を入力、ステージ(維持期、妊娠末期、授乳期(初期、中期、後期))を選択し、次に給与飼料を飼料ライブラリから選択して給与量を入力すると六角形のレーダーチャートで各養分要求量(DM、TDN、CP、NR、Ca、P)に対する充足率が表示されます。とてもシンプルな構成となっており、直感的に選択した飼料の養分量とバランスを把握することが可能となります(必要養分量を100として、それに対する過不足を表示)。
飼料設計アドバイスシステム(フィードバランサーカウ)操作画面(ベーシック版)
また、飼料給与量だけでなく、各成分のバランス(特にエネルギーとタンパク質)を把握することに重点を置きました。というのも、第一胃内での良好な微生物発酵や高い受胎率を実現するための子宮内環境を維持するためには、エネルギーとタンパク質のバランスがとても重要になるからです。レーダーチャートに“NR”という見慣れない項目がありますが、これは栄養比と呼ばれ、簡単に言うと“飼料中のエネルギーとタンパク質の割合”を示したものです。“NR”が低い飼料はタンパク質含量が多い飼料で、“NR”が高い飼料は炭水化物の含量が高い飼料になります。CPとTDNを別々に考えると少しややっこしくなるので、この“NR”に絞って調整するとバランスのとれた設計が可能となります。
飼料設計というと敷居が高いイメージを覚えますが、今回開発した飼料設計アドバイスシステムでは、日常的に使用している自分のスマホを片手に、体重や繁殖ステージを変えることで、どのくらい養分要求量が変化するのかを感覚的に知ることができます。例えば、500kgの繁殖雌牛では維持期の1日当たり乾物(DM)要求量は6.5kgなのですが、授乳期には10kg必要になるので、そのままの飼料給与量だと充足率がグッと減ってしまいます。このレーダーチャートの六角形の変化を眺めるだけでも、増し飼いの重要性を認識できる機会になるのではないかと考えています。
飼料設計としての使いみちだけでなく、現在給与している飼料(組み合わせ)のバランスを評価するための活用も想定しています。
4.飼料設計を行ううえで重要なこと
①問題がなければ変更しない
現在給与している飼料メニューを見直すのは、何か問題が生じている場合に限ります。繁殖成績も良好で、事故なども発生していない場合、飼料メニューを変更する必要はありません。ただ、良好な成績で推移している時の飼料メニュー(量やバランス)を計測し、記録しておくことは重要です。また、自給粗飼料のロットが変わる際などは、見直しが必要になります。さらに、肉用牛繁殖雌牛においては、寒冷環境下で繁殖成績が低下することが報告されています。寒冷時における養分要求量の増加に対して充足率が不足していることが要因の一つとして考えられます。したがって、気温の低下に伴い現状の飼料メニューのバランスを維持したまま、充足率を高める必要が出てきます。
②飼料設計を単なる“数字合わせ”で終わらせない
今回開発した飼料設計アドバイスシステムは、だれでも簡単に繁殖雌牛に必要な養分量と給与飼料のバランスを評価できるツールになることは間違いありません。しかしながら、飼料設計を行ううえで重要なことは、養分充足率をただ単に100%に合わせること(数字合わせ)が最終の目的ではないということです。レーダーチャートの六角形を充足率100%に合わせることに満足するケースが多くあるのですが、飼料設計後の繁殖雌牛の状態をよく観察して、状態が良い方向に変化しているかどうかを確認し、そうでない場合は、設計内容を繰り返し修正しながら状態を改善していくことがもっとも重要です。この場合も、給与飼料の記録を残しておくと、なぜダメだったのか、どうしたら良くなったのか、を後々振り返ることができるようになり、生産性の改善に役立ちます。“ノーメジャー・ノーコントロール”(計測できないものは制御できない)なのです。
5.子牛用飼料設計アドバイスシステム(フィードバランサーカーフ)
今回開発した飼料設計アドバイスシステムには、繁殖雌牛用のプログラムの他に子牛用の飼料設計プログラムの機能も盛り込んでいます(フィードバランサーカーフ)。子牛用では、体重の他にターゲット1日増体量(DG)を入力することで、発育に応じて必要な養分量と飼料給与の充足率が繁殖雌牛用と同じように表示されます。良好な繁殖成績を達成するためには、育成牛の飼養管理が重要になります。過肥にならないような飼料設計に活用して頂きたいと思います。
飼料設計アドバイスシステム(フィードバランサーカーフ)
6.飼料ライブラリーへの配合飼料登録について
飼料ライブラリーに、デフォルト値として繁殖雌牛用配合飼料、子牛用配合飼料銘柄を登録するすることが出来ます。メールにてお問い合わせください。メールアドレス:livestock@ozzio.jp
飼料設計アドバイスシステムの入手方法
■Android 版
■iOS 版