新規忌避剤:ピグニクス

新規忌避剤(ピグニクス:PIGNX)による牛舎へのカラス侵入防止効果について

カプサイシンを有効成分とするゲル状新規忌避剤(ピグニクス:PIGNX)

目 的

畜舎内に侵入してくるカラスは、穀類飼料などを盗食するだけでなく、サルモネラ症の原因となる病原体サルモネラを保有していることが報告されており、家畜・家禽の感染症、伝染病の運搬者になり得ることが指摘されています。

カラスの牛舎への忌避対策としては、防鳥ネットが用いらていますが、ネットが張られていない時間を狙って侵入したり、少しの隙間を見つけて侵入したり、効果は限定的でです。また、忌避対策として様々な器具・機材が使用されていますが、持続的な効果を得ることは難しいです。

カラスを駆除するには、鳥獣保護法に基づいて、都道府県知事(地域によっては市町村長)の許可を受ける必要があるため、むやみに駆除したり捕獲したりすることはできません。したがって、牛舎への侵入を持続的に防げるような対策が求められます。

そこで、牛舎へのカラス侵入防止対策として、米国で開発された新規忌避剤(ピグニクス:PIGNX)の効果を検証

子牛牛舎の飼槽で濃厚飼料を盗食するカラス

新規忌避剤(ピグニクス)について

新規忌避剤(ピグニクス)は、天然のカプサイシンを有効成分とするゲル状の製剤で、2018年に国内での取り扱いが始まった忌避剤です(写真)。

米国の特許取得済みでEPA(米国環境保護庁)にて認可登録され、国際的な品質安全規格であるNSF(米国衛生基金)認証も取得している極めて安全性の高い製剤です。

カプサイシンは接触すると末端神経にヒリヒリとした感覚を起こし、刺激と忌避作用を発揮するため、カラスは塗布エリアを避けるようになります。なお、有害性・有毒性はありません。

米国では、害鳥忌避剤のほか食品産業分野におけるネズミ忌避剤として広く普及しています。国内においては、工場における害鳥忌避、外食チェーンやスーパーの調理場におけるネズミ忌避としての活用の事例はあるものの、牛舎におけるカラス忌避効果については事例がありません。

カプサイシンを有効成分とするゲル状忌避剤(ピグニクス)

方 法

民間の肉用牛繁殖農場の子牛牛舎を試験対象

飼料給与は、朝と夕方の1日2回で、濃厚飼料と粗飼料ともに飽食(飼槽には常時濃厚飼料が存在している状態)

忌避剤の効果を検証するために、タイムラプスカメラを牛舎内の柱に取り付けて、1時間に1回の自動撮影を行い、録画画像を解析して牛舎への侵入カラス羽数を計測

忌避剤処置後11日間の牛舎への侵入カラス羽数を処置前13日間と比較することによって、忌避剤の効果を検証
撮影時間は、朝の6:00から夕方の16:00まで

忌避剤の処置は、牛舎内でカラスがよくとまる箇所(飼槽上のません棒など)に、はけを用いてゲル状の忌避剤を塗布(写真)

2日目以降は、カラスに付着して忌避剤が少なくなっている箇所にだけ追加塗布

子牛牛舎への忌避剤の処置

結 果

まとめ

新規忌避剤(ピグニクス)処置により、牛舎への侵入カラス羽数は有意に減少し、その効果も持続することを確認
                    
忌避剤の有効成分の作用をカラスが学習したことによる効果ではないかと考えられました

本忌避剤は、牛舎内のカラスがよくとまる箇所に塗布することが効果的
                    
カラスが牛舎内に侵入して飼槽にたどり着く前には、高い確率でません棒などにとまって からアクセスします。したがって、日頃からカラスの行動に目を配り、牛舎内への侵入箇所やカラスの排泄物が多い箇所を中心に忌避剤を塗布するようにすれば、カラスはその牛舎を避けるようになるものと考えられます

本忌避剤はジェルの性状のため、カラスのモニタリングツールとしての効果も期待
                    
カラスがジェルに触れると塗布部分に足跡が残るため、カラスの痕跡を多く確認できた部分に集中的に塗布すれば効果も大きくなります

一方で、忌避剤がなくなったことに気づくと、また侵入してくることも想定
                    
定期的に忌避剤の塗布状況を確認して、忌避剤が少なくなっている箇所には追加をしていく必要があります

カラス以外の忌避効果について

忌避剤を使用することで、鶏舎や豚舎の隙間からの野生動物の侵入も防止できるようになると考えられます

忌避剤を塗布した場所を乗り超えて外部に移動することもできなくなるため、既に畜舎内部に侵入してしまったネズミに対しては、封じ込めて駆除作業を容易にする効果も期待できます

畜舎の隙間への処置により、鳥インフルエンザや豚熱といった伝染病に対する防疫対策としての活用も期待できるものと考えられます

【本忌避剤の使用上の注意】
本忌避剤は、カプサイシンが有効成分のため、ヒトが素手で触って顔や目に触れた場合にはヒリヒリとしみたりするので、取扱いには注意が必要

新規忌避剤(ピグニクス:PIGNX)に関するお問い合わせ

PiGNX JAPAN 株式会社
https://pignx.jp/

ライブストックジャパン合同会社 LiveStock Japan LLC